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推しが結婚発表した

推しが結婚発表した。

Twitter上で公式からの通知を見た時、見慣れない文字に疑問符は浮かんだが何の予感もなかった。けれど【ご報告】から始まるタイトルを見たその瞬間、一気に動悸が早くなって、震える手でページに飛んだら推しからの結婚報告だった。

相手は今まで何度もネット上で噂になっていた人だった。お揃いの服を着て、お揃いのアクセをつけ、イベントの関係者席で目撃情報が上がることもあったし、同棲を始めた後には文春砲にも撮られた。長く推していると女が変わったな、みたいなことはなんとなくわかるもので、両家の挨拶も引っ越しして同棲を始めたタイミングもなんとなく分かっていた。アンチから匂わせカップルと叩かれているけどその通りなのでぐうの音も出ない。最近は独り身アピールばかりしていたのにまだ続いていたんだな、と思った。 

 

ここ数年、いつ推しは結婚してもおかしくないと思っていた。でもどこかで結婚発表するはずがないとも思っていた。

結婚しても発表できない、するならレーベルを辞めなきゃならなくなる。かつて推しはそう言っていたけど、そうならなかったってことはレーベルや事務所から許可が下りたってことだ。それとも相手方の知名度や現在の推しの人気や立ち位置から許されたのだろうか。正直匂わせでライブの動員は全盛期よりかなり減ったしガッツのあるおまいつもどんどん現場数減らしてゆるオタにシフトしているしこの現状で事務所とレーベルが許可した理由が分からないけど4月のシングルの売上楽しみですね。

同時に相手方のレーベルからも許可が下りたことになる。推しよりも知名度も高くファンも多く活動量も多い相手方のことだ、再三関係性をパパラッチされた今では今後妊娠や出産があれば隠し通すことは難しいと考えたのかもしれない。

 

 

結婚発表後に推しがファンの前に姿を見せるのは、2月頭のアニメのイベントだ。私の2020年推し始めはその現場になる予定だった。おめでとうとリプを送るファンのうち、何割がそのイベントに行くのだろう。

推しは中堅声優の中では当たり役や人気作品への抜擢も多く人気も知名度もそれなりにある方だとは思うが、浅く広く手をつけるライト層が多い界隈においてどれくらいのファンが推しを全身全霊かけて応援してきたのだろう。ライブやイベントは来ても円盤や雑誌は買わないファンなんて吐いて捨てるほどいるけどまぁ推しはそれでもいいのかもしれないな。売れようが売れまいがそれは推しが責任を取るべきことであるし。

 

ぶっちゃけ推しは我が強いわりには打たれ弱く、敢えて茨の道を選んで周囲に中指を立てて威嚇して生きてきたような人だし、これからもきっとずっとそう生きていくのだろう。

頭が弱いことも、向こう見ずなところも、女の趣味も性格も悪いところも推しなのだ、と思う。

正直発表するならアーティスト名義のHPではなくせっかく開設した公式HPで発表しろよとも思ったが、ファンの欲目で庇わせてもらうならこれは推しなりの分別、なんだと思う。

「声優」は裏方の職業であり作り手の一部でしかなく、キャラクターや作品に自分というものを極力乗せるべきではないと推しは考えていた。だからこそあるがままの自分でいられるアーティスト名義で、自分が考えうる最良のパフォーマンスとして、こんな形で報告したんだろうなと。

…やけに小難しい言葉遣いをしようとして日本語がおかしくなっていることにはちょっと笑ったけど。

 

 

一晩寝て起きても推しの結婚発表は夢じゃなくて、テレビをつけたらきっとニュースにもされているだろうからテレビすら見られない。

昨日はお祝いムードに溢れているTLすら見るのがつらくて、ひたすら情報に触れずに引きこもって気持ちの整理をしていた。

周りはお祝い一色で自分の居場所なんてどこにもないと思っていたけど、たびたび届いた私のことを心配するLINEや、Twitterでかけられる優しい言葉に救われた。幸いなことに、こういう結婚発表があった際のお決まりの言葉、「どうして祝福できないの?」は母親以外からかけられることはなくて、(母よ、娘が中学生の頃から推しに傾倒していた様子は見てきていただろうに…)本当に私は優しい友人たちに恵まれている。

今は少しだけ関係者のツイートを眺められるようになった。先輩や後輩、今まで色んなところでお世話になったスタッフさんたちまで、推しの結婚を祝福してくれていて、推しは愛されているなぁと思ったら嬉しくなった。

たくさんの人に愛されている推しのことを好きだと思うし、そう思えることにどこか安心している自分がいる。

 

推しは私の人生だった。私が今この職種についているのは推しがいたからだし、進路について推しに相談したりもした。

推しがいなければ出会わなかった人たちがたくさんいる、見られなかった景色がたくさんある。全部全部始まりは推しだった。

15年近く、私の生活の片隅には推しがいて、推しのことでたくさん笑ったしたくさん泣いたしたくさん幸せになった。

推しを好きになってから今まで、自分のできる範囲で推しのことを全力で応援してきたという自負はある。推しのことは今も好きだ。でもこれからも今まで通り全力で応援していけるかはちょっとよくわからない。

別にCDや雑誌を捨てたり処分したり、推しについてのあれこれを手放したいとは思わない。今持っているチケットを破り捨てて現場に行くのをやめたりだとか、そういうこともない。2月も3月も4月もツアー含め現場には行くし、4月のアイドルコンテンツライブはそこそこ積んだから当たる未来しかいらない。ただでさえ当落で情緒が安定しない状況の中当落二日前に結婚発表してくるなよ我が推しよ。

ただ、これから名前を見る度、イベントで姿を見る度、相手の顔がチラつくのかと思うとどうにも行き場のない感情が胸を覆い尽くすのだ。

 

推しの出演作や推しの特集された雑誌、グッズなどで埋め尽くされた六畳間の部屋で今までのこととこれまでのことをぼんやりと考える。

スマホには推しの演じるキャラがいるソシャゲアプリが入っているしMUSICには推しの歌が入っているしカメラロールには推しの写真が保存されている。

推しが結婚した時自分はどうなるのかなぁ、なんて想像したこともあるけれど、結局その時にならないとわからないと考えを放棄しておいて、いざその時になって実際に身に起きた今でも何も分からないでいる。

 

 

願わくば、この15年で積み重ねてきた大切な思い出たちが負の感情で塗り潰されませんように。そしていつか心からおめでとうと言えるその日が来るまで、推しのファンでいられたらいいなと思う。